謎に包まれた滝崎武光氏について調査した
2020年、アメリカの経済誌「フォーブス(Forbes)」が発表した日本の大富豪ランキングで2位にランクインした株式会社キーエンス創業者の滝崎武光(たきざき たけみつ)氏。
株式会社キーエンスと聞くと、社員の平均年収2,000万円超の超大手企業だが、組織については謎が多い。
要因のひとつに、創業者である滝崎氏自体がほとんどメディアに姿を見せないことがある。
メディアに出ずともコツコツと積み重ねてきた実績が社会に評価されているのだろう。
ワクセルを主催されている嶋村吉洋 ( Yoshihiro Shimamura )氏も以前、「私は~」と述べるなど、滝崎氏は実業家からも憧れられる存在である。
出展:嶋村吉洋氏の事業は多様な人が集まる未来型ビジネス!起業のヒントばかり
両者は、メディアにほとんど姿を見せないことだけではなく、組織作りのプロとしても知られている。
創業16年で株式会社キーエンスを株価日本一の座に導いた滝崎氏について、数少ないメディア情報をもとに経歴や株式会社キーエンスの組織作りについて調べてみた。
滝崎武光氏の経歴と株式会社キーエンスの事業内容について
滝崎氏は1945年生まれ。
兵庫県尼崎市出身。兵庫県立尼崎工業高等学校卒業。
詳しいことはあまり書かれていないが、実は2度の会社倒産を経てから、株式会社キーエンスの前身であるリード電機株式会社を1972年に地元尼崎市で創業した。
その後、吹田市や高槻市に事務所を移転。
1986年に現社名を変更し、1988年1月18日に株価日本一を達成した。
株式会社キーエンスは、「センサ、測定器、画像処理機器、制御・計測機器、研究・開発用 解析機器、ビジネス情報機器」を取り扱っている企業である。
取り扱う事業は特に他企業と大差があるようには見えない。
しかし、なぜキーエンスがこれほどまでの企業になったのか。
「顧客の欲しいというモノは創らない」
これは滝崎氏の格言だ。
この格言はキーエンス独自の、「顧客の根本的な課題解決のためにコンサルティングを行う」という営業スタイルに表れている。
どのような営業かというと、顧客の生産現場にまで足を運び、顧客が欲しいと考える顕在ニーズの商品ではなく、顧客が気づかなかった潜在ニーズを叶える商品開発を行い、売り込むスタイルだそうだ。
また、顧客の潜在ニーズに合わせたオリジナル商品を提案するため、株式会社キーエンスでは、70%が「世界初」や「業界初」といった商品が生み出されている。
その裏には顧客の潜在ニーズに寄り添った商品開発が可能な技術力があるということである。
このように独自の営業戦略と技術力で、会社利益率を高くすることが可能となっていると考えられる。
滝崎武光氏が組織作りで大事にしていることとは?
滝崎氏が組織作りで大事にしていることは、会社の考え方である行動指針に沿った行動を全社員が行っているかということだそう。
「顧客第一に考える」と言っても、一般的な会社でいえば社員によって考え方にバラつきが発生してしまう。
株式会社キーエンスでは考え方のバラつきが発生しないように、社員1人ひとりが「いまの自分の考え方が行動指針に沿っているか」という観点で行動することにしている。
また、各部署での事細かなルールや指標が決まっているため、担当者によって答えが違うということが起こらない。これこそが、株式会社キーエンスの強みと言える。
キーエンスは実力主義の会社である。
年功序列ではなく実力主義・成果主義という考え方で、20代でも大きな仕事も任せられるなど、社員同士が年次の序列を意識することなくフラットに意見を出しあえる社風。
仕事をバリバリ頑張りたい人にとっては、働きやすく風通しのいい会社とも言える。
このように組織作りを仕組化して株式会社キーエンスは発展してきた。
驚くべきことは、経営理念を滝崎氏は創業当時から貫いてきたということ。
トップの考え方を社員全員に浸透させ、会社の方向性を見出していることが組織作りで大切なのではないだろうか。
滝崎武光氏が創ったキーエンス財団
公益社団法人キーエンス財団をご存じだろうか?
滝崎氏を調べている中で初めて知り、素晴らしい活動をしているので紹介する。
キーエンス財団は、下記を目的に2018年に設立された。
この法人は、学業優秀かつ品行方正な学生に対し奨学金給付による経済的な支援を行い、もって社会に貢献する人材の育成に寄与することを目的とする。(1)学生に対する奨学金の給付
引用:公益社団法人キーエンス財団ホームページ
(2)その他目的を達成するために必要な事業
募集要項を確認すると、給付型奨学金として8万円を大学4年間毎月支給するという内容で、募集人数は年間500人。その4年間で総額19億2千万円の大事業だ。
「日本の将来を担っていくのは若者だから、なにか力になれることはないか。」
夢や目標を持った学生を支援する、エンジェル投資家という側面ももつ滝崎氏。
これからの活躍にも目が離せない。
終わりに
社長業として大事なことは、会社を運営するだけではなく、後継者を育成すること。
滝崎氏が2000年に株式会社キーエンス代表取締役会長に退いてから、これまで3人社長が就任している。
3名とも40代という若さで代表取締役社長に就任しており、株式会社キーエンスの文化を象徴している。
組織を作るのは人。
個の能力には差はあるが、行動指針に従うことによりバラつきをなくした組織作り。
株式会社キーエンスの文化を習った会社が、今後増えてくるのではないだろうか。