
デフリンピックは、聴覚障がいを持つアスリートの国際スポーツ競技大会です。英語では Deaflympics と呼ばれ、国際ろう者スポーツ委員会(ICSD)の主催で開催されています。1924年に初開催されて以来、長い歴史を誇り、世界各国の聴覚障がい者選手が技術と情熱を競い合う舞台です。東京での開催は日本で初めての試みであり、大きな注目を集めました。
デフリンピックは、単なるスポーツ大会ではありません。コミュニケーションや社会参加の多様性を問い直す機会でもあります。というのも、聴こえる・聴こえないの違いを越えて、スポーツを通して人と人がつながることこそ、本当の意味でのインクルーシブ社会の実現につながるからです。そんな中で、ソーシャルビジネスコミュニティ「ワクセル」が主催した「デフリンピック報告会」は、単なる振り返りイベントに留まらず、多くの気づきを参加者にもたらしました。
ワクセル主催「デフリンピック報告会」とは?
2025年11月15日〜26日に開催された東京2025デフリンピックを受けて、ワクセルは11月29日(土)に「デフリンピック報告会」を東京都・アイルしながわで実施しました。約150名が参加し、聴こえる・聴こえないの違いを越えた交流が行われました。
この報告会の魅力は、単なる成果発表だけではありません。
- 実際の選手が語る対談
- デフスポーツの体験プログラム(バスケット、卓球、テニス、陸上など)
- 飲食・物販・ハンドメイド体験ブースの出店
など、五感で感じられる「参加型イベント」として開催されたことです。聴覚障がい者だけでなく、家族や友人、地域の住民まで幅広い層が一緒に楽しめる場になりました。
私自身がこの取り組みを非常に評価したいのは、こうしたスポーツ体験を通じて、実際に聴こえる人が「障がいを持つ人と一緒に体を動かす」ことで、理解が深まる仕掛けがあった点です。スポーツは言葉を越えるコミュニケーションツールになる──その可能性を強く感じました。
選手の声が伝えるリアル
報告会にはデフリンピックで実際にメダルを獲得した選手たちもゲストとして参加しました。特に以下の4名が紹介されました。
- 宮川百合亜さん(デフテニス・女子ダブルス銀メダル)
- 門脇翠さん(デフ陸上・男女混合リレーで日本デフ記録樹立)
- 亀澤史憲さん(デフ卓球・男子団体銅メダル)
- 川島真琴さん(デフバスケットボール・女子金メダル)
彼らの言葉は、数字や結果だけでは伝わらない競技の苦労や、日常生活でのコミュニケーションの工夫、チームメイトとの信頼関係を感じさせてくれます。これは「スポーツを観る」だけでは伝わらない、生の声です。ワクセルがこうした対談の場を作ることで、選手たちのリアルな想いが一般の人たちに届きます。聞くだけでなく、その背景を知ることは、スポーツをより深く理解するうえで非常に価値があると感じました。ここで重要なのは、デフリンピックを単なる「障がい者スポーツ」扱いにせず、人間の挑戦と努力の物語として伝える視点です。これが、デフリンピックの認知向上に繋がります。
ワクセルの挑戦とこれからの展望
ワクセルは単なるイベント企画会社ではありません。公式サイトによると、「コラボレートを通じて、人に夢を与え続けるソーシャルビジネスコミュニティ」として活動しており、多様な分野で連携を生み出しています。デフリンピック報告会はその一環であり、次のような未来を想定しています。
- 障がい者スポーツへの理解と関心の継続的な向上
- ユニバーサルイベントの定期開催
- 地域社会と障がい者が共に成長する場づくり
これこそ、単発イベントに留まらない、地域の「文化」としての動きです。ワクセルのようなコミュニティの存在は、今後ますます重要になるでしょう。社会の多様性を受け入れる力は、単なる知識ではなく体験と共有から生まれると私は考えています。